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地理感覚からみる人の成長

 地図を眺めていると、大体の距離感と地名が一致するようになりました。特にここ10年ほどは秋田、新潟、埼玉、群馬と居を移しながら生活していた上に、旅行を趣味として沖縄以外の殆どの土地に足跡を残してきたから当然かもしれません。  高校を卒業するときには都道府県の位置や名前については頭に入っていたし、大学時代に地図を読みながら街を歩いたりもしていました。  しかし、今は自分自身の一部のように感じるこの地理情報はいつから自分のものになったのだろうか、と疑問に感じます。  考えてみても、よくわからないというのが実情です。何かのタイミングですべてがわかるようになったわけではありませんでした。  最初は自分自身の立っている地面、見える景色、それらが地図情報と一致し、テレビや写真の映像が見えない世界をつなぎました。次第に行動範囲が広がり、見えない世界は見た場所、触れた場所に変わっていったのです。  何も知らなかった時の自分が今では思い出せませんし、当たり前のようにこれまでの経験を生かして生活している自分に気づくようになりました。人間というのは面白い生き物なのだなと感じます。

グラベル好きなら北海道の冬を!

  2月も下旬となり、だんだんと気温が緩んできた感覚があります。雪も1月下旬のように粉雪ばかりではなく、あられやぼた雪が見られるようになりました。  さて、本日の話題は雪道走行についてです。  現在の北海道・札幌市は根雪圧雪で、所によっては融雪剤の影響で崩れていたり、日中は解けたりという状況です。  まず、圧雪面というのは通常のアスファルト路面と違い、凹凸ばかりで河川敷を走るような感覚に近いものがあります。  次に、融雪剤で崩れた雪は、砂浜を走る感覚が近いでしょう。細いタイヤや空気圧の高いタイヤは空転し、轍に非常にタイヤが揺さぶられます。  融解した雪は水に変わり、轍を水たまりに変えます。まるで洪水のような5センチ以上もある場所も少なくありません。  そして、新雪はタイヤで踏みしめる感覚が非常に良い一方、トルクが抜けた際の空転が大きいです。空気圧を落としての走行が難易度を下げます。  このように、非降雪期の路面では考えられないくらいに「荒れた」路面が延々と続きます。  私は、8月に降雪期の走行を想定し、ファットバイクを購入して乗ってきました。これまで乗車してきた自転車の大半が折り畳み自転車だったので、剛性の高さとファットタイヤの対応できる路面の広さに驚きました。堤防なども斜めに登ったり下りたり、砂利道が非常に楽しい自転車ではあるのですが、普段走行する路面というのは9割9分舗装路なのです。  しかしながら、冬の北海道は違います。歩道を走ろうとも、車道に出ようとも氷雪のグラベルが待ち受けているのです。9割9分が実質的に非舗装の路面状況に変わります。ファットバイクの魅力というのは冬にこそあるなと私は今では考えるようになりました。  本州の冬とは比べ物にならないくらいの注意点やノウハウが必要ではありますが、それを超えた楽しみがあるのも事実です。もし興味がある方がいらっしゃいました、ご相談ください。

変革は海の向こうから

 ここ北海道は明治期に大量に本州から人間が流れ込んだことで大きな変革を迎えた大地です。鉱山は掘られ、道が伸び、林野が田畑になりました。そのせいか、今でも北海道は多様性を尊重する風土があるように感じます。  さて、その北海道に20余年前に移住し、いくつかの職を経験してから独立していらっしゃるのが私が懇意にしていただいている自転車店の店主さんです。前職は北海道のローカルチェーンアウトドアショップで自転車の販売にかかわっており、当時のブログを購読し感銘を受けました。  2000年代初頭から、自転車販売部門に所属していた彼は、折り畳み自転車を使って旅行しよう、カーゴバイクを用いて家族でキャンプ、自転車を生活に取り込むということを積極的に発信していました。  そのブログの中で着になったのは、当時から「小径車は走らない・遅い」という誤解があるということです。これは今でも小径折り畳み自転車に乗る私自身が訊かれることです。  自転車の速度というのはギア比で決まります。車輪の直径が小さいのであればギア比を上げることで直径の大きい自転車と同じ負荷で走ることができるのです。レースにおいても小径車が有利になるケースがあり、現在はロードレースを中心に禁止されていますが、それについてはまた別日に語ります。  なかなかに誤解というのは解けないものです。時代というものは変わりません。  ただ、この国は市民革命の国ではないので無理もないのかもしれないのです。  我が国の近代国家体制への移行は、当時の政権の改革によって成しえませんでした。海外列強が第三世界を分割していく情報を得ていながら、変革は限定的でした。その一方で、変革は一部の急進派によってなされ、市民はそれをなんとなく受け入れてきた歴史があります。  黒船が来て、幕府は倒れました。原爆が落ち、この国は敗北しました。そして両方とも、たくさんの犠牲と痛みを伴いながら国を変化させていきました。きっと今後も同じようになるのではないでしょうか。  現在、いくつかの分野での技術や研究の鈍りがあり、外貨を獲得することが以前に比べて厳しくなり、一方で外国からの観光客によってこの国の経済は何とか回っています。  再び黒船が来ているのです。かつて独特の文化と民族を愛した諸外国の旅人は時代を経て再びこの地を踏んでいます。彼らの存在が、彼らの影響が間違いなく私たちの国

冬の定山渓でキャンプしてきました~後編

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 この記事は 前編 の続きの記事です。併せてごらんください。  定山渓自然の村までの自転車での走行については1月29日に行っていたので、午後から休みということで急ぎ自動車を使いました。自転車だと3時間半かかった道のりが1時間…自動車は面倒でお金がかかるが速いですネ。  現地到着は16時半頃でした。自動車で行くにしても、バッグ3つというのは非常に身軽です。ULキャンプはいいですよ!  定山渓は積雪が1m程で夏とは風景が違っていました。キャンプサイトは除雪されていましたが恐らく10~20センチほど地面まであったのかなと思います。ペグが刺さりにくかったのが印象的でした。  アルコールストーブと500mLのクッカーだけなので、お湯を沸かすことしか想定していません。しかしながら、お湯が沸かせれば熱燗が飲めるのです。また、お茶やコーヒーを淹れることもできます。  夕食は道中のセイコーマートで購入したおにぎりを食べ、つまみを食べながら晩酌しました。粉雪がさらさらとテントをなぞるような音が心地よかったです。これは北海道の雪キャンプならではでは?と思います。  お酒の量は少量で、20時ごろには床に入っていました。雪の上で寝るのは今回が初めてでしたが、銀マットとエアマットの組み合わせでも、特に地面からの冷気を感じることがありませんでした。  ただ、晩酌の時に足先が冷たくてたまりませんでした。2個持ってきたハクキンカイロで温めながら過ごしていましたが、室内履きを用意してもいいかもしれません。  暖房がないのでだんだんと天幕内の温度が下がり顔だけは寒いなと感じながら眠りました。ハクキンカイロは午前3時くらいまで発熱し続け、非常に頼もしかったです。  6時間くらい、普段通り継続して眠れてそこからは何度か二度寝しつつ朝を迎えました。  翌朝、前室で保管していた水がすべて凍っていたのは驚きました。  これまで河口湖や静岡で冬キャンを経験してきましたが、気温が氷点下になったとしても大量の水がすべて氷になったことがありませんでした。それだけ長時間低温が続いたということです。  今年の宗谷では水を凍らせずに確保するために何かしらの対策をしないとなりませんね。  朝食は、水を汲みなおしてお湯を沸かし、カップラーメンを頂きました。冬はしっかりと食べ、体を温めないと動き出せません。  8時過ぎから撤収を開始

入門向けの自転車とは3

  この記事は、以前に公開済みの 入門向け自転車とは1 , 2 の続きです。併せてごらんください。  今回は「3,タイヤサイズは20インチであること」について偏見を語っていこうと思います。  多くの自転車屋においてあるタイヤは、シティコミューターに多用される26インチ、27インチが主流を占めます。20インチ以下のいわゆるミニベロと呼ばれるタイヤ、チューブはあまり在庫していないケースも多いです。  しかしミニベロの中では20インチは用意されていることが多いです。コミューターの中でも低床のものは20インチを使ったり、子供用の自転車でも使われる規格だからです。このため、部品が比較的手に入りやすいというメリットがあります。  日常的に使うにしても、大会やブルベなどで非日常的に使うにしても、トラブル時に補給がスムーズに受けられるに越したことはありません。  また、備考として、タイヤのサイズ表記というのは同じインチ表記でもWO規格とHE規格というものがあり、一部ミリ表記のWO規格も存在し、それぞれに互換がありません。  ご自身の自転車がどの規格のものなのか確認し、わからなければ現物を持ってお店に問い合わせるのが確実です。  最後に、以上3点を満たす自転車は意外と多く、それだけ幅広く使えて需要も多いということです。私が最初に購入した自転車もそうでした。その車両の紹介についてはまた次の機会に。

折畳自転車のファットバイク

https://tokusengai.com/_ct/17606822  最近たまたま目に留まった記事です。キャプテンスタッグのワイルダーFD206という20×2,80インチのふたつ折り自転車が雪国でも使える…という記事なのですが、注意書きが必要かなと感じたので書きます。  雪の上を自転車で走ったことある人はわかると思いますが、常時続くグラベルを走行する感覚です。微小な凹凸が続き除雪が入っている場所ほど雪の塊や轍が大きな段差を作り、迫力のある路面が魅力です。  一般に、Dahonやターンですら「砂利道や山道の過度な走行は保証できない」と説明書やフレームに注意書きがあります。それだけフレームを折りたたむ構造は強度を著しく下げているのです。  さて、キャプテンスタッグの折り畳み自転車は大丈夫なのかと言えば、そうではありません。上記の2社と同様にできるだけ雪道をはじめとする荒れた路面は走行するべきではないでしょう。比較的安価のためヒンジ以外の部分が調子が悪くなるのも多いと聞きます。  また、そもそも2,8インチはセミファットという扱いをされることが多いタイヤです。MTBを中心に多く用いられる2,8~3,5インチほどの太さをセミファットタイヤと呼んでいます。転がりと路面への食いつきのバランスの良いタイヤが多いです。  筆者の住む千歳や、インプレッションを行った道東地域は北海道でも比較的降雪が少ない地域かつ、自動車と組み合わせた短距離の運用であったために使えたかもしれません。北海道の他の地域、東北以南の降雪地帯で使うには腕前が必要になると考えられます。  筆者のような使い方に限るのであればワイルダーFD206は十分にこなせると思いますが、本格的に雪道を走りたい、凍結面を走りたい、という願望がある方についてはご相談ください。私も成長途中ながら経験から教えられることもあると思います。

冬の定山渓でキャンプしてきました〜前編

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 2月10日に定山渓自然の村にてキャンプに行ってきました。今年の宗谷での年越しを想定した、人生初の雪上キャンプです。  装備としてはオルトリーブのサイドバック2つにテントはワークマンのテントを画像のようにくくりつけるという想定でした。これに輪行袋が加わる程度ですので、十分に実用の範囲内と言えるでしょう。  持っていった主要装備のリストは以下の通りです。 ・ライトレジストドームテント(ワークマン) ・銀マット(アライテント) ・エアマット・枕(モンベル) ・寝袋(モンベル#0) ・LEDランタン(ジェントス) ・軽量テーブル(オゼンライト) ・チタンクッカー500mL(エバニュー) ・チタンアルコールストーブ・五徳(エバニュー) ・ハクキンカイロ2個 ・ジッポオイル1缶 ・アルコール燃料400mL ・ダウンジャケット・パンツ(ネイチャハイク1200FP)  本日についてはここまで、感想と反省については後日書きます。

入門向けの自転車とは2

  昨日投稿した 入門向けの自転車とは1 の続きを書いていきます。   1,折畳自転車として開発された折畳自転車であるということ  項目を一瞥して意味が分からないと感じる人が大半と思います。言い換えるとこれは「折り畳んだ上で活用することが前提に設計された」ということです。  折り畳み自転車は近年非常に数を増やしています。ホームセンターでよくわからない会社のロゴが入っていたり、ドン・キホーテなどでフェラーリやハマーのロゴを入れた20インチくらいの二つ折りの自転車は街中を多く走っています。  ただ、これらの多くの車両というのは、汎用のパーツを使って設計されているため、比較的折りたたんでもさほど小さくならず、重いという特徴があります。  比較対象として挙げられるのは、DahonやTernの自転車でしょうか。Dahonは折畳み自転車の特許の多くを持っている草分けにして大きな企業です。TernはDahonから株分けした、両方ともアメリカの企業です。  前述の自転車が、14~17kgだとすると、Dahon、Ternのそれは同じ20インチモデルでも8~13kg程です。折り畳み機構もコンパクトでスマートにまとまっており、小さく素早く折り畳むことができます。  これらの違いが何を生むのかというと「折りたたんだ上で、使ってみたくなる」気持ちにさせてくれるのです。どうしても重かったり、折り畳みが手間に感じるのであれば、結局折りたたまずに使うだけにとどまります。折り畳みが楽で軽ければ、電車に乗せて遠くに行ってみようか、自分自身の体力が続くまで冒険してみようか、だめなら折りたたんでタクシーを使おう、という気持ちになったときに非常に有用なのです。

入門向けの自転車とは1

 まず最初に書いておきますが、完璧な自転車は存在しえません。以前も書いたとおり、大雑把ではありますが「軽くて速ければ脆く、重くて遅ければ頑丈」なのです。軽さ速さと頑丈さを天秤にかけて、それぞれ個々人の用途範囲内の自転車を選ぶのが吉です。  さて、一般論的なことはおいておいて、これから自転車に乗り始めたい、生活の一部としたい、場合によっては遠くまで出掛けたい、という方におすすめしたい自転車の基準について考えていきましょう。  私は次の3点を満たす自転車が入門向けかなと考えています。  1,折畳自転車として開発された折畳自転車であるということ  2,タイヤサイズは20インチであること(ETRTO 28-406が一般論、後述)  3,価格は10万円程度に収まること  明日以降、それぞれの項目について解説していきます。 

入道雲の由来

  入道雲の屋号のようなものを思いついたのは、2021年7月のことでした。  当時はすでに現職に対する失望が大きく、転職を考えていた時期でした。同時に、転職するくらいならもはや独立してしまおうかとも、当時は妄想程度でしたが息まいておりました。  さて、2021年7月、鹿児島まで1週間ほどの研修への同行が命じられていました。当時本州の大半が梅雨明け宣言後にずっと雨が続く状況でした。その本州を陸路で脱出して一足先に夏の始まった九州佐多岬へと向かいました。  研修が終わって帰路についたとき、北九州は線状降水帯が発生しておりました。高速道路は封鎖されていませんでしたが、雨粒で視界ゼロを経験して、速度を落としながら関門大橋を渡りました。  白い雨の帯を抜けると、すぐに雲が切れ、光が差しました。  振り返ると、青空に高く高く、真っ白な入道雲が立ち上っていたのです。  地上から水蒸気が上昇気流に乗り、それが入道雲をはじめとする積乱雲となって、やがては雨粒となって再び地上に落ちます。水はそれを何度も何度も繰り返します。  私はその雲に、これからの人生を重ねました。  今持ち始めた夢を実現する道は、きっとたやすくありません。周囲の状況に流されながら、時として気持ちが盛り上がり、時として意気消沈することを繰り返しながら進んでいくだろう。  それでも人生は回り続ける、夢をかなえられるか、かなえられないかは別にして。  こうして、入道雲を使おうという気持ちに決まったのです。  奇しくも昨年から北海道に赴任し、本州にいたころに比べると入道雲を見る機会は大きく減ったなと感じてはおりますが、志や気持ちの持ちようは今日も変わらず、回っていきたいと考えています。

目指せ、年越し宗谷!

 昨年の8月に私は北海道に赴任しました。それ以前から北海道で冬に自転車に乗る文化を知り、バイクやらで宗谷岬で年を越す集団がいることも知っていました。  勿論それらに強い憧れがあったので、離職を考えていた現職ではありましたが、北海道への異動は運命の巡り合わせであり、命運を掴んだ結果であったと思います。  異動してきた翌週には、雪道での有効な交通機関であるファットバイクを購入し、今も毎日乗るように心がけています。1月には美瑛スノーサイクルフェスティバルにて、耐久レースにも参加しました。  次の目標は、憧れの年越し宗谷です。実現のためには3つの能力の獲得が必要と考えています。  ひとつめは、稚内(南稚内)駅から宗谷岬まで走破する脚力です。気候が悪ければ中断して街まで戻ることもあるので、往復で60㎞は雪道を走ることが必要です。これについては1/27に定山渓まで50km強を走破し、実現可能な領域です。  二つめは、厳冬の宗谷岬で一晩を過ごす道具とノウハウです。低温下でのキャンプは河口湖で経験していますが、降雪状態でのキャンプはまた違った工夫が必要でしょう。これについては2月中に雪中キャンプを行い、現状の装備でどれくらい対応できるのかを検討します。  三つめは、状況判断能力です。雪が積もり始めてから2カ月、既に様々な気象条件を経験してきました。積雪が始まったころのぬかるんだ路面、体が慣れないために厳冬期よりも寒く感じました。1月でも時折気温が氷点付近まで上昇し、雨が降るときもありましたが、その後再凍結した路面は最悪のコンディションでした。  そしてキャンプも自転車も自然環境相手のアクティビティですから、自分自身の技量と照らし合わせて対応していかなければと、北海道の気候と向き合いながら感じています。  このように、目的に対して分析しながら経験を積み重ねています。札幌に来ることができて、冬に自転車に乗ることができて本当に今は幸せです。  この楽しい乗り物の魅力を今後伝えていきたいと思います。  

ゼロとイチの差

 0と1の差と聞くと、数字上では1であり、例えば2と3、10と11といった差と変化無いように感じるかもしれません。  しかしながら、これを現実に無い、有ると置き換えるといかがでしょうか。モノであったり能力であったり、その性質の大小の違いよりも有無の方が及ぼす影響の差は大きいと私は考えています。  私がこの考えに至ったのは、自転車とキャンプでの経験が大きいです。  私が最初に手にした自転車は3万円ほどの20インチ、スチールフレームの二つ折り折り畳み自転車でした。今思うととてつもなく重く、14㎏の車体重量がありました。それでも、休日の行動半径が数倍に広がり、最終的には遠方に輪行で旅行していました。  最初に購入したメスティンはダイソーのそれでした。330円で1合炊きができるミニメスティンは、キャンプ場での炊飯・焼き物、湯沸しだけでなく、休日の自炊の道具にもなりました。  たった一つの道具が、世界観を変えて、行動を変化させ、幸福感を増幅させます。そしてそれらの道具は、決して高いことがすべてではないのです。  最低限の機能を果たすことのできるイチは、何も持っていないゼロとは天地の差です。  もし、自転車がDAHONやTernだったり、メスティンがトランギアだったときにイチとゼロほどの差を感じるのでしょうか。私はそうは考えていません。上質な道具の品質は非常に満足できるものですが、かといって安いギアが使えないということではないからです。  これから自転車趣味を始めてみたい、キャンプをしてみたいという人には、イチの道具を私はお勧めしたいです。十分な機能を持ち、価格も手が出しやすく、何より道具を使う人の知識や経験、工夫が何よりも道具を生かすと考えているからです。  今後、入門向けのおすすめの道具など紹介していこうと考えてます。

3の法則

 3の法則というものを皆さんは知っているでしょうか。  人類は、空気がなければ3分間、体温が維持できなければ3時間、水がなければ3日間、食料がなければ3週間で死に至るというものです。加えて米空軍では、意思と希望がなければ3秒で人は死ぬと教わると聞きます。  空気、体温、水、食料というのはある意味で基本的なサバイバルに必須な要素です。米空軍で教わる意思と希望というのは、主にパイロットの極限状態での生存を想定してのことでしょう。しかしながら、私はこの意思と希望については、軍のパイロットだけではなく普遍的なものであると考えています。  私たちに希望をもたらすものは何でしょうか。私はそれは夢だと考えています。なりたい自分、人生で成し遂げたいもの、守りたいことなどが挙げられるでしょう。そして、それらの実現には意思が伴います。  私には、実際の店舗で自転車やキャンプをはじめとして、自転車交通、法規などについて集って語らえる場を創るという夢があります。昔はこのように明確に表現できるものではなかったですが、自転車が好きでそれにかかわり続けるためにはどうすればよいか考えて、少しずつ夢を周囲の人と語らいながらゆっくりと歩んでいる実感があります。  恐らく、今の世の中に生きにくさを感じている人もたくさんいると思います。私も以前はそうでした。何をするべきなのかはすぐに見つかるわけではありません。しかしながら、生きながらえながら、時として周囲に流されながら自分だけの大切なものを見つければ人生はだんだんと輝いて感じられると思います。

最良の自転車とは

  国内に存在する自転車の台数は7000万台とも言われ、日本は自転車大国です。  その文化を最も表現しているのが、シティコミュータと呼ばれるカテゴリー、街乗り自転車です。いわゆる「ママチャリ」がそれにあたります。堅牢なフレームと修理の容易なタイヤホイール、シングルギアを主流とした単純な構造、前かごとキャリアという王道のアクセサリは、通勤・通学、お買い物という日常生活に必要な要素を兼ね備えた自転車です。  ある意味その対極にあるのが、競技用の自転車でしょう。ピストバイクやロードバイクがその代表格です。一般にカーボンやチタンといった軽量で、メーカーが組み立てたシビアなセッティングのホイールを装着し、幅広い速度域にケイデンスを対応させるための多段ギアを備えた「戦闘機」です。  目的のために道具は生まれます。この両者もまた、それぞれの目的のために改良が重ねられ今の形になったのです。目的を離れて不適切な道具を用いるとき、例えば一般にシティコミューターでレースに出場したり、競技用の自転車を日常生活で使うときは、かなりの苦痛を伴ってしまうことでしょう。  さて、前置きが長くなりましたが、タイトルにある「最良の自転車」について考えてみたいと思います。結論から言いますと、人と目的の数だけの最良の自転車があると考えています。これは上記した通りの例が示す通りです。  私の自転車趣味は、折り畳み自転車から始まり、折りたたんだ上で何をするかに重きを置いています。折りたたんで持ち歩く、折りたたんで部屋に置く、折りたたんで店先に置く、折りたたんでもよく走る、折りたたんでも楽しいといった具合でしょうか。  私にとっての最良の価値観が、誰かにとっても最良でありましょう。その誰かに出会いつながり、交流できる場を設けるのが私の人生の目標です。