おりたたぶ はいいぞ
皆さんは「おりたたぶ」という作品をご存知でしょうか?今回は、おそらく唯一の折りたたみ自転車を題材にした商業作品の紹介を行ってみたいと思います。
【概要】
こんきき氏による、折りたたみ自転車を題材とした2019年から2021年までの連載作品で、単行本は計4巻発行され、連載は終了しました。
【ストーリー】
大学進学のために東京に引っ越してきた鳴島ゆうみは、大家から駐輪場のない物件と知らされて落胆する。
自転車に乗りたいと考えながら電車に乗っていると、折りたたみ自転車のA-bikeを携行している滝沢奈緒と出会う。
ゆうみの事情を知った奈緒は、自宅へ案内し1台の折りたたみ自転車を貸し出し、道案内をしながら多摩湖へのサイクリングへとでかけるのであった。
【面白かった点】
・通な自転車表現
最初に登場するA-bikeというのは、ホイール径8インチの極小径車で、癖がウルトラに強いので、私のような通な人間でも見たことある程度の自転車です。
A-bikeは携行性に偏っていますが、それ以外にも(折りたたみ自転車としては)めちゃくちゃ走るTyrell、Tartaruga、王道的なDAHON、Tern、そしてBROMPTONなど、それぞれの個性を見ているだけで飽きないです。
作者のこんちきさんも相当数の自転車を乗り比べており、その経験や所感が最大限に発揮された作品だなと感じました。
・自転車趣味=スポーツ走行ではない作品
自転車趣味というと今はまだロードバイクやグラベルといったジャンルが主流です。ロードレースやヒルクライムといった一般に言うスポーツ走行を是とする文化が形成されています。
一方でこの作品で描かれている彼女たちの好きというのは、その世界から一歩引いた世界観です。
奈緒は、自分の力で走る自転車を楽しみ、メカニックもこなすので、一番スポーツ寄りかもしれませんが、対照的にゆうみは自転車から流れる景色を感じ取り、それを絵に書くことが好きです。
それ以外にも、普段の買い物にも使うが家の中に保管したい、輪行と組み合わせた観光ができれば十分、ロードバイクに乗っていてもそんなに早く走らないから携行性のある方がいい、等々それぞれのキャラクターが合理性を持って折りたたみ自転車を使っている様子が表現されているのが素晴らしいです。
【残念だった点】
一点だけ、作者としてはもっと連載したかったのだろうという描写が多々見られるなか、4巻でお話をたたまざるを得なかったことです。
1巻にあるしまなみ海道の描写、3巻くらいから増え始める登場人物たち、まだまだお話をふくらませる余裕は十分にあります。
しかし単行本の売上が悪く、連載を継続することができませんでした。マガジンの読者層とも合わなかったのかもしれません。
【最後に】
個性的な折りたたみ自転車の世界を表現してくださった「おりたたぶ」には感謝しかないです。
連載が終了決定してからも非公式有志のオフ会が行われ、こんちき氏との交流が行われていたりと盛り上がっているような企画なので、この活動を継続してあわよくば2期をというのは切なる願いです。
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あなたもこの本が気に入るかもしれません。"おりたたぶ(1) (週刊少年マガジンコミックス)"(こんちき 著)
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